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大阪地方裁判所 昭和42年(む)57号 決定 1967年3月01日

被疑者 氏名不詳 外一名

決  定 <被疑者氏名略>

右被疑者らに対する大阪府屋外広告物法施行条例違反被疑事件について、大阪地方裁判所裁判官が昭和四二年二月二五日にした勾留請求却下の決定に対し大阪地方検察庁検察官から右裁判の取消しを求める旨の準抗告の申立てがあつたので、当裁判所は併合審理のうえ次のとおり決定する。

主文

本件各準抗告の申立てを棄却する。

理由

検察官の本件各申立ての要旨は、記録添附の「準抗告及び裁判停止」申立書(甲)計二通に記載のとおりである。

そこでその当否を検討するに、被疑者らは、いずれも警察官、検察官の取調べおよび原裁判官の勾留質問の段階において、被疑事実に対する認否はもとより、被疑者らの氏名、年令、住居、職業等を黙秘しているが、それぞれ本件犯行の現場を警察官により現認逮捕されたもので、その犯行の態様は、共犯者、長谷玲子の司法巡査に対する供述調書、司法警察員作成の現場写真撮影報告書、計二通、実況見分調書、押収品の存在等によつて明らかにされており、被疑者らおよび長谷玲子の共謀関係は、現場での外形的行為によつて十分うかがうことができるので、被疑者らに罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとは認められず、かつ、右現場写真撮影報告書(昭和四二年二月二四日付の分)添附の被疑者らの写真を手がかりとしてその所在を調査するとか、被疑者らに本件ビラ貼りを依頼したと考えられる西野恒次郎を取調べる等さらに捜査をすれば、やがて被疑者らの氏名、年令、住居、職業等その他身上、経歴を知ることもさして困難であるとは認められないところ、被疑者らの弁護人になろうとしており、また被疑者らも選任する意向であると認められる弁護士東垣内清から、被疑者らを呼出しに応じて何時でも出頭させることは勿論、証拠隠滅、逃走等の不都合はもとより、いやしくも審理を妨げるような所為のないよう十分監督する旨の身柄引受書が当裁判所に提出されているので、右身柄引受書は何ら合理的な理由が認められないのに被疑者らの氏名さえも明らかにしない不備なものではあるが、本件事案が軽微であることおよび被疑者らの推定年令等に照らして、この程度のものでもなお被疑者らの出頭を確保するに足りるものと認められるので、被疑者らに逃走すると疑うに足りる相当の理由があるとも認められない。よつて被疑者らに対する勾留の請求を却下した原決定を、不当とする本件各準抗告の申立ては理由がないので、刑事訴訟法四三二条、四二六条一項によりこれを棄却すべく、主文のとおり決定する。

(裁判官 石原武夫 安達敬 白井万久)

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